土景 -GROUND VIEW-

大地の見かたを自分のものに、土景。

NO.56
内藤廣 vol.5『5歳の頃の母親の膝の上』

やっぱり『市民ケーン』かなと思うんだよな。最後に暖炉で燃やされる子供用の橇が出てくる。帰っていく場所って、ずっと思い出すと、これはちょっと誰にも言っていないけど、考えてみたら、“5歳の頃の母親の膝の上”って答えるのかな。そのときの光景って何となく覚えてるんです。描こうと思ったら描けそうな感じ。それは多分、守られてる状態なんだ。そのときすごく安心したんだと思うんだよね。どこに帰っていくのかっていったら、そういう所かなっていう気がする。そのときの膝の温かみとか柔らかさだとか。そういう気がするんだよね。

(少し思案して…)あの、たとえばね、
死っていうのを自分のこととして考えると当然それしかないんだけど、この年になると他者性みたいなのを考えるよね。つまり、後の人間がどう考えるかっていうことの方が大事で、僕はどうかな。どうでもいいかなと。要するに、たまに思い出したりするのに何もなきゃね。記憶が遠のいて、忘れて日々を生きている。やっぱり、何か思い出すきっかけみたいなのは必要なんだよ。宗教はそんなに信じていないけど、墓みたいなのは個人として思い出すきっかけにはなるよね。そういうきっかけが要るようだったら、作っておけばいいし。そのぐらいの感じですかね。なんだったら陸前高田の「海を望む場」(※ 高田松原津波復興祈念公園)で献花してもらえばそれで良しとするっていうんで、広田湾の真ん中にでも撒いてもらうかな(笑)。