東京大学名誉教授・篠原修(景観工学・設計計画思想史)が手に取った本の内容を、本人の語り口で紹介する書棚のぞき見企画。
GSデザイン会議のメールニュースで配信された約200本に及ぶ記事から編集部でピックアップして掲載します。
今回は第四回を掲載。
隈研吾の著書『小さな建築』。
建築の自立性とは?現代建築再考のすゝめ。
2013年8月8日 篠原修
約束通り、前回に続いて建築。
伊東さんの本を受け取ってからすぐに隈研吾さんから本が送られて来ました。伊東さん以上にビックリ。勿論隈さんの名前ぐらいは知っていましたが(建築界で知らないと言ったら潜りか、という事になるのでしょう)、何の面識もないからです。
題は『小さな建築』岩波新書。
「強さをめざして進化してきた大きなシステムは、大災害の前にもろくも崩れ去る。大きな建築にかわる小さく自立した『小さな建築』は、人間と世界とを再びつなげられるだろうか」
これは、表1のキャッチコピイ。
ざっと読みました。
彼のイメージする小さな建築は、水のレンガ(よく工事で使っている水を入れる赤いタンク)やハニカム、折るや膨らますの構造です。これらとインフラとの関係には触れる所なし。テーマは「自立」なのに。
自立といえば上下水道、電気などのインフラに頼らない事を意味するので、内藤さんがよく引き合いに出すモンゴルの「ゲル」が頭に浮かぶのですが、隈さんはそれには一言も触れません(知らないのかしら)。自立した小さな建築の典型だとおもうのですが。
結局彼の話は「自立」論では展開出来ずに、「小さな」に終始するのですが、それをよしとしても南雲君がやっている屋台にも及ばないとおもいます。隈さんの小さな建築は持ち運びできないのですから。
何を言いたかったんですかね、彼はこの本で。
なんで小生に本を送って来たのかも謎で、もっと大きな謎はこの本を「大」岩波が新書で出すという事でしょうか。もっともその答は既に、山本 夏彦が「私の岩波物語」で書いているとおりなのかも知れません。

隈研吾『小さな建築』岩波新書, 2013
<次編:篠原修の「面白かった本」その5>