ウガンダと東京――2つの拠点をもつTERRAIN architectsにて共同代表を務める樫村芙実さん。日本各地やウガンダ、そしてインドネシアなどでも活動する国際的な建築家である。
「"地域に根差した建築"をつくるのではなく、"建築は地域に何ができるのか?"と考える。」
単に地域の表象をかぶせるのではない。彼女は、その土地で営まれる暮らしのあり方を見据え、考え抜くことで、命を宿した建築を生みだそうとしている。そして、それを、その土地に暮らす人々に任せて手放すのである。共に、ものをつくり、手渡すということ。そうした考え方の背景には、どのような想いがあるのか。彼女の一連の建築活動を通じて、その意志に迫りたい。
樫村 もうひとつ、集合住宅を今やっていて、これは山梨県で大学が近く、学生がよく住むエリアなんです。だから、学生アパートはよくあるんですけど、みんな閉じてる個室が多い。そこで、コレクティブ・ハウスとまではいかないけど、何か繋ぎ留めるものがあると良いなと。
集合住宅設計プロジェクトの俯瞰図
樫村 この四つが集まっているように見えるのが建物なんですけど、左手北の国道沿いにコンビニがあって、敷地はその駐車場に面していますが、アプローチは右手南の山側からです。
集合住宅1Fの内観模型
樫村 今、模型で考えていることをお話ししますね。これは1階なんですが、ピロティと住居で構成されていて、L字のかぎかっこ(「」)のようになっています。構造の人たちとは、真ん中のスペースを土間にしたいっていう話をしていて。
集合住宅2Fの内観模型
樫村 そして、2階がこんな感じですね。外に向かっていくような感じで、ちょっと開いています。今この水回りをどうしようかと考えているところです。この1階は本屋さんにしようとしてるんですけど、近所の大学は文科大学で文系の学生さんが多い。ずっと住み続けるわけじゃない人たちですが、だからこそ、少しでも生活以外のものが滲み出て引き継がれていくようなアパートは面白いって話をしていて、ここで何かしら循環していったらいいなと思っています。それで、建築としては、設備がどのぐらいのスパンで更新されるのかを考えることになります。10人の学生をターゲットにするのですが、風呂は要らないから事務所として使いたいって人もいるだろうし、それはそれで良いなとか、それは受け入れなくてもとか、そういう微妙なラインをずっとスタディーしていて。今のところ、各住戸の中央部にキッチンがあって、外側のちょっと死角になってる所…
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