ウガンダと東京――2つの拠点をもつTERRAIN architectsにて共同代表を務める樫村芙実さん。日本各地やウガンダ、そしてインドネシアなどでも活動する国際的な建築家である。
「"地域に根差した建築"をつくるのではなく、"建築は地域に何ができるのか?"と考える。」
単に建築に表象をかぶせるのではない。彼女は、その土地で営まれる暮らしのあり方を見据え、考え抜くことで、命を宿した建築を生みだそうとしている。そして、それを、その土地に暮らす人々に任せて手放すのである。共に、ものをつくり、手渡すということ。そうした考え方の背景には、どのような想いがあるのか。彼女の一連の建築活動を通じて、その意志に迫りたい。
樫村 今日は呼んでいただいた際に、樫村さんの主観を語ってくださいって言われておりまして(笑)。なので、今二つやっている日本のプロジェクトで考えてることを、思い切って話してみたいなと思います。ランドスケープの話から入って、そこからちょっと展開していきたいと思うんですけれども。
崎谷 主観とプロセスの話ですね、楽しみです。
樫村 私の事務所の名前をTERRAIN architects(テレイン・アーキテクツ)といいます。土地と気候と地面が建築をつくるという風に考えて名付けたんですね。日本のプロジェクトも始まって、満を持してというか、初めてランドスケープの方たちと仕事をさせていただくことになり、HUMUS landscape architecture(ヒュマス, 以下HUMUS)を御紹介して頂いたんです。それで、HUMUSさんのウェブサイトのプロフィールのところに、「HUMUSUとは大地の在り様」と書いてあって、我々が考えていきたいイメージと、こんなに近い考えをもっていることに感激したんです。このウェブサイトは、すごく読み応えがあるので、ぜひ皆さんにも読んでみてほしいなと思うんですけど。
崎谷 良いですねえ。あとで是非読ませて頂きます。
樫村 これが、そのプロジェクトの初期の模型で、今彼らと一緒に取り組んでいるものです。
川崎市の保育園設計プロジェクトの初期模型 ©Terrain architects
樫村 川崎市の保育園で、ロケーションとしては写真右の北側に緑道が走ってて、もともと水道局の土地でした。多摩川にも近く、水の流れ――川の流れ、かつての船の流れ――っていうのが実際にも面影としても残る場所なんですよ。ちなみに、敷地はL字型で、写真左の位置、南側に隣接するようにして消防署があります。敷地内の緑道側は、元々水道の調圧塔のあった場所なんですけど、HUMUSの霜田さんから、近代的な物で…
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