Emi Evans(エミ・エヴァンス)さんは、今日様々な国際的プロジェクトに参加し活躍する音楽家・歌手である。数多くのTVCMのほか、世界的に人気を博するゲーム『NieR』シリーズや『DARK SOULS』、スター・ウォーズ最新作の『Star Wars:Visions』、現在放送中のNHK連続ドラマ『ちむどんどん』など、国内外の多種多様な作品に参加してきた。
今回のインタビューでは、英日ハーフである彼女から、文化・言語・風景などを切り口として、その独創的な表現手法とその制作秘話、歌に込められた想いを聞き、また彼女自身の原体験と未来について語ってもらった。
「録音が終わったら本当に旅から、いい旅から帰ってきたみたいな気持ちになりますね」
――現実と架空の、過去と未来の、ローカルとグローバルのさまざまな世界観を表現してきた彼女のクリエイションを、その半生とともに紐解いていく。
伊藤 freesscape(フリーススケープ)についてもお聞きしたいんですが、まずはユニットの名前について気になりました。その名前の造語の中には、”-scape”という接尾語が入っていますよね。スケープというと、景色のような意を含むようなイメージがありますが、このバンド名にはどのような意図があるんですか?
エヴァンス もともとは、“escape”(=脱出)から来ているんです。Escape from freedom、つまり、決められた自由から脱出して、自分の自由を見つけようみたいな意図がありました。それで、Freedom System Escapeと。
伊藤 Freedom System Escape。
エヴァンス そう。Freedom System Escapeという単語が元で、freesscapeになった。だから、”S”が2個あります。でも、そこにはLandscapeの響きも含まれていますね。
伊藤 心の中の自由な景色のような?
エヴァンス そうですね。暗い癒やし系の音楽に、自分たちはそういう意味を込めています。
伊藤 なるほど。freesscapeとして音楽活動を始めてから、だんだんとゲームの音楽とか、そういう別のメディアとミックスアップして世界観をつくるような音楽作品も増えてくると思うんですが。
エヴァンス Yes.
伊藤 それまではヒロさんとエミさんの2人の音楽をやっていたけど、CMやゲームとなるとまた少し別だったりもしますよね。2人のやっている音楽、世界観を誰か別の人が見つけてくれて、興味をもってもらえて、声がかかるようになったんですか?
エヴァンス そう。たとえば、さっきの話の後に、また友達の友達というかたちでAvexのMusic Videoのディレクターの方に出会って、彼らがいくつかのタイアップとして、freesscapeの曲ならこのコマーシャルにぴったりだと押してくれたんです。たしか、ヨコハマタイヤのCMと、メナードの化粧品のCMと、あとゴルフのグッズのCMにfreesscapeの曲が使われました。
メナードのCM(2008, 日本メナード化粧品株式会社)より
深田恭子さん出演のTVCMにフリーススケープの楽曲が使用されている。
エヴァンス JASRACとかの契約もないから、多分使いやすかったという事情もあると思うけど。
伊藤 そうか。インデペンデントで活動していたから。
エヴァンス そうです。でも、本当はAvexのディレクターは、会社としてはAvexのアーティストの音楽を優先するはずだけど、いくつかのアーティストの候補の中にポンと、「これもどうですか?」って黙って入れてくれたら…
伊藤 通ってしまった?(笑)
エヴァンス そう(笑)。それが、3回ぐらいあって。あと、きれいなキヤノンのカメラのコマーシャル(『Canon EOS Mark III – COLOR OF HO…
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