ウガンダと東京――2つの拠点をもつTERRAIN architectsにて共同代表を務める樫村芙実さん。日本各地やウガンダ、そしてインドネシアなどでも活動する国際的な建築家である。
「"地域に根差した建築"をつくるのではなく、"建築は地域に何ができるのか?"と考える。」
単に建築に表象をかぶせるのではない。彼女は、その土地で営まれる暮らしのあり方を見据え、考え抜くことで、命を宿した建築を生みだそうとしている。そして、それを、その土地に暮らす人々に任せて手放すのである。共に、ものをつくり、手渡すということ。そうした考え方の背景には、どのような想いがあるのか。彼女の一連の建築活動を通じて、その意志に迫りたい。
樫村 崎谷先生とお会いしたのは、前回の造園学会のワークショップですかね。
崎谷 そうですね。"先生"ではなく、"さん"で良いですよ(笑)。
樫村 はい(笑)。そのとき話しそびれてしまったんですが、ウガンダでのプロジェクトで、建物を建てるだけではなくて、庭やランドスケープも頑張って設計してますというのを、話したかったなと思っていたんです。
崎谷 それは是非ですね。よろしくお願いします。
ウガンダで手掛けた教育施設 ©︎Terrain architects
樫村 これは私が2011年から設計をはじめたプロジェクトで、5年間かけて完成しました。しばらく渡航もできてないんですけれど、今どうなっているかを説明すると、つい先日、私のパートナーがウガンダまで見に行ったんです。そうしたら、とある木の根っこが、すごい張っちゃっているというレポートを受けて「あれがこんなに成長したの?」って驚いたのです。
建物を侵食しそうな位置にまで張り出した根っこ ©︎Terrain architects
崎谷 最近の写真ですか?
樫村 そうですね、1カ月経っていないぐらいです。奥に見えてる木も結構育ってて、なかなかいい木陰をつくってはいるんですけれど、この植栽の根が、建物を侵食しそうなところまで張ってきちゃって、まずいね、と現場のみんなが見下ろして相談している写真なんですけど(笑)。木を植えた当時どうだったのかっていう写真を掘り起こしてみたら、これが2015年のものなんです。
建設当時(2015年頃)の様子 ©︎Terrain architects
崎谷 おお!すごい小さいですね(笑)。分かんないぐらいの(笑)。
樫村 ははは(笑)。そうなんですよ。何故ここに植えたのかっていう話をすると…
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