土景 -GROUND VIEW-

大地の見かたを自分のものに、土景。

ALL INTERVIEW REVIEW NOTICE
NO.78
西倉美祝 vol.7『市民社会の小さな“公”』

日本の“公共的空間”って市民がつくってきたと思うんです。フランスのように市民がパークをパブリック化したみたいな経緯がないから、公的空間や公共施設が、公共的になるというプロセスをちゃんと辿ってないんですよね。だから、勝ち取ってきたものではないんです。けれど、界隈としてつくってきたという経験はあると思っていて、これからはそこを伸ばすしかないと思うんです。民間の空間が、できる範囲で公共的になるというのは意図的にも考えていますし、社会もこれからそうなるだろうなと。日本人が市民社会を自分で実現したということが、チャンスとしては明治維新のときと、第2次世界大戦の前後であったと思うんですけど、その機会を逸してしまったので、パブリックネスというのをヨーロッパと同じような形でつくることはできないですね。

INTERVIEW
2023/06/10
#西倉美祝
#原広司#永山祐子
NO.77
西倉美祝 vol.6『空間体験=多様体との遭遇』

オルタナティブ・パブリックネスは、建築物1つの設計だけで満たされる公共性論ではないです。不完全だけど個性的な空間を、一つの空間や建築物、都市の中にいっぱい重ねて、人が自由に移動し、選択できるように、この重ね合わせを一つの場所に、どれだけぎゅっと入れることができるかのというところが目標です。行為を選択しているという点については、実際そうなんですけど、でも、僕ら人間なので、選択しないって無理じゃないですか。生きる過程で必ず何かを選択してるんです。だから、「人間は選択している」という前提に立ってやった方がいいというのが僕の意見です。所与と選択の話だと、自分で選択してるということが、他人にとっての遭遇だったりする。つまり、所与と選択って万人が共有してるものじゃないと思うんです。

INTERVIEW
2023/05/30
#西倉美祝
#伊東豊雄
NO.76
西倉美祝 vol.5『一つに頼らず、繋がりに頼る』

お酒を造るというのは一つの例ですけど、そのために土地が満たすべき条件と、その土地の歴史や共有されている文化というものは、切り分けつつ共存することが出来ると思います。その土地の複雑怪奇でいかようにも解釈できる大きな塊というか、お酒の話とは別のラインから見えるいろんな土地の豊かさもあるじゃないですか。そういう話は、その時々の要請に合わせて、切り離すこともできるし、くっつけて考えることもできる。それによって、両方が活きた状態になるということがあるのかなと。たとえば、そこに新幹線が通っているとか、昔ここで武将が合戦をした歴史があるとか、坂本龍馬が旅行に来ただとか、お祭りが夏の時期にあるとか、町内会があるとか、

INTERVIEW
2023/05/19
#西倉美祝
#ウラジミール・レーニン#小倉ヒラク
NO.75
西倉美祝 vol.4『建築の公共性を再考する』

土木とか都市デザイン系の公共性というのは、物理的なデザインだけではなくて、社会学とか政治学における公共性に近しいものだと思うんです。それと比べると、建築にできることは少ないと思うんです。建築物一つ一つに関して言えば、当然使う人も限られているし、サイズも限られている。でも、だからこそできることもあるだろう、ということで、そういう都市や土木の方面とは違うところから考え直して論を構築しようと。できること/できないことがあるというところですね。あとは、僕がそういうことについて、なおざりにしながらやっていくと、耐えられなくなってしまう性質なので。

INTERVIEW
2023/05/05
#西倉美祝
#泉山塁威#藤本壮介
NO.68
原広司 vol.4 『想像と創造:花も紅葉もなかりけり』

要するに、秋の夕暮れっていうときに、「花も紅葉も なかりけり」っていったときに、花もあるし、花もないしというふうに解釈しないと、なんであの歌がそんなにいいのか伝わらない。つまり、二重映しってあるわけじゃないですか。だから、あると、ないとが、同時に見える世界っていうのがすごいんじゃないかなと言ったわけだよ。非現実的な部分と現実的な部分、イマジナリーなものとリアルなものとを同時に、たとえば、ある谷が見えたときには、その谷は本当の形と、そうでないフィクショナルな形が同時に見えているというようなことがある。

INTERVIEW
2023/03/16
#原広司
#ミース・ファン・デル・ローエ#藤原定家#松本幸夫#ノーム・チョムスキー#西行#エトムント・フッサール#ニコラス・クザーヌス
NO.67
原広司 vol.3 『二千年を超える形而上学を問え』

こういう話を建築はしないんじゃないかと思っているのが大間違いで、建築は絶対にするんですよ。そういうことを踏まえて、僕は長々とソローとエリオットの話をした。ただ、そうではあるが、その人たちには神様がいたんじゃないの?って。僕たちにはいない。とすると、どうするの?そういう問いでいいんじゃないかと思うんです。それは形而上学的な問いであってさ。子どもにでも分かるし、大人の専門家であっても分からない。それと、人を信用して生きたほうがいいんじゃないか。時間があるんだから、みんなで考える。いろいろ十分考えられるんじゃないか。そんなせっかちにしなくてもいいんじゃないか。

INTERVIEW
2023/03/07
#原広司
#アルベルト・アインシュタイン#アリストテレス#フリードリヒ・ヘーゲル#紀貫之#クルト・ゲーデル
NO.66
原広司 vol.2 『丹下健三の家と、柳田国男の書斎』

モデルが近いところにあるということはすごく重要でさ。その近くにいるのといないとでは全然違う。当時は、建築家なんてどうやったらなれるのか、全然分からないんだよね。それで、丹下さんは建築家はどうのと、いろいろ言ってくれるんだけど、丹下さんの奥さんに「僕不安で、何もやっていないし、建築もまだやろうとも何とも思っていないんですけど、大丈夫ですかね?」って言ったら、「大丈夫。あなた、できるわよ。」なんて言われてさ(笑)。「あなたは丹下さんのような建築家になる」って、もう決め付けている感じ。そんな感じの雰囲気があった。

INTERVIEW
2023/03/04
#原広司
#丹下健三#カール・マルクス#大江健三郎#磯崎新#柳田國男#山本理顕#藤井明#伊藤恭行#ル・コルビジェ#ジャン=ポール・サルトル#アルベール・カミュ
NO.65
原広司 vol.1 『戦災、飢餓、貧困。神様はいなかった。』

私が建築を始める前に戦争があったわけです。多摩川の下流の、川崎に何年か住んでいたけど、そこで素晴らしい世界が一瞬あって、それから戦争になった。空襲になると、更地になって、長野県の飯田市に逃げていった。が、待っているのは飢餓と貧困しかない。草の1本も生えていない。人間の食べれるものがないんですよ。生き物でも何でも、イナゴであろうが何だろうが全部食べてしまったわけですよ。みんなが探したんです。その間、一度も神が助けてくれると、そんな発想したこともなかったね。つまり、森の生活の中にいた。そのとき、俺は森の生活をしたかもしらんな。それに近いんですよ。

INTERVIEW
2023/02/27
#原広司
#ジャン=ポール・サルトル#アルベール・カミュ#内田祥哉
NO.64
原広司 vol.0 『序章:世界の実存と虚構性』

「重要なことはフィクショナリティーなんだよ。つまり、虚構性。」心外な言葉が急に飛び出てきたように思われた。しかし、原先生は次のように言い切るのであった。これまでさまざまな建築設計や都市計画に関わってきたが、けっきょく建築はインフラストラクチャ―に触らせてもらえないのだから“比喩的に現れる”ほかない、と。だからこそ、それらはフィクションを必要とするのだという。 そして、そのことを考えるために重要な参照点だとして、2人の文学者の名前を挙げた。一人はH.D.ソロー、そしてもう一人はT.S.エリオットである。

INTERVIEW
2023/02/24
#原広司
#吉見俊哉#見田宗介#隈研吾#小嶋一浩#ヘンリー・デヴィッド・ソロー#トーマス・スターンズ・エリオット#ラルフ・ウォルドー・エマーソン#ウォルト・ホイットマン#エミリー・エリザベス・ディキンソン#ハーマン・メルヴィル#鴨長明#マックス・エルンスト#ヴェルナー・カール・ハイゼンベルグ#エルヴィン・シュレーディンガー#伊藤遼太
NO.57
内藤廣 vol.6『理解しあえるということ』

本当にいい音楽に接したときっていうのは、体が熱くなって、背筋がゾクゾクして、この一秒一秒が過ぎてほしくないって思うような感じがある。そういう体験全部が僕のものづくりとか空間とか考えるときに重なってくるっていうのはあるんです。多分あらゆる芸術もそうなんだと思う。結局のところ、分かり合えるかどうか。それが悲しさかもしれないし喜びかもしれないけれど。僕らの社会の中でどれだけそういう場所や時間をつくれるか、そうしたものを通して理解し合えていることを感じ合えるのが大事なんじゃないかなと思います。

INTERVIEW
2022/08/13
#内藤廣
#エルネスト・ショーソン#岩城宏之#武満徹#アルトゥール・ルビンシュタイン#スヴャトスラフ・リヒテル#マルタ・アルゲリッチ#グンドゥラ・ヤノヴィッツ#ヘルベルト・フォン・カラヤン#篠原修#白川静
NO.56
内藤廣 vol.5『5歳の頃の母親の膝の上』

やっぱり『市民ケーン』かなと思うんだよな。最後に暖炉で燃やされる子供用の橇が出てくる。帰っていく場所って、ずっと思い出すと、これはちょっと誰にも言っていないけど、考えてみたら、“5歳の頃の母親の膝の上”って答えるのかな。そのときの光景って何となく覚えてるんです。描こうと思ったら描けそうな感じ。それは多分、守られてる状態なんだ。そのときすごく安心したんだと思うんだよね。どこに帰っていくのかっていったら、そういう所かなっていう気がする。そのときの膝の温かみとか柔らかさだとか。そういう気がするんだよね。

(少し思案して…)あの、たとえばね、
死っていうのを自分のこととして考えると当然それしかないんだけど、この年になると他者性みたいなのを考えるよね。つまり、後の人間がどう考えるかっていうことの方が大事で、僕はどうかな。どうでもいいかなと。要するに、たまに思い出したりするのに何もなきゃね。記憶が遠のいて、忘れて日々を生きている。やっぱり、何か思い出すきっかけみたいなのは必要なんだよ。宗教はそんなに信じていないけど、墓みたいなのは個人として思い出すきっかけにはなるよね。そういうきっかけが要るようだったら、作っておけばいいし。そのぐらいの感じですかね。なんだったら陸前高田の「海を望む場」(※ 高田松原津波復興祈念公園)で献花してもらえばそれで良しとするっていうんで、広田湾の真ん中にでも撒いてもらうかな(笑)。

INTERVIEW
2022/08/09
#内藤廣
#岩本健太#隈研吾#妹島和世
NO.55
内藤廣 vol.4『求めなければ生まれない』

学生の時は月一遍ぐらい山口さんの所に行って話し込んでいたんだけど、聞いたことがあるんですよ。「おじさん、どうしたらそういう交友関係を持てるんですか」って。そうしたら、「求めなさい」って言われた。自らね。求めなければ生まれない、だから求めなさい。そうじゃないと繋がらないって。そう言われたからっていうより自然とそうなったのかもしれないけど、それ以降僕の知己を得た人たちは宝物、本当にかけがえのない素晴らしい人たちにこれまで出会ってこれた。これが僕の人生でのいちばんの贅沢。それが栄養になってるのかもしれないね。

INTERVIEW
2022/08/05
#内藤廣
#吉阪隆正#山口文象#猪熊弦一郎#三枝博音#中川幸夫#石元泰博#フェルナンド・イゲーラス#アントニオ・ロペス・ガルシア#フェリックス・グランデ#山田洋次
NO.54
内藤廣 vol.3『建築家・内藤廣になる前の話』

僕はそんなに頭のいい人間じゃないので、子どもの頃から苦労はしましたね。慢性鼻炎か何かでいつも鼻が詰まっていて、記憶力がよくなかったのはそれだと思ってるんだけど(笑)。論理的に考えるっていうよりは、ぼーっと考えるタイプだった。ある種適応力を欠いていて、このぼーっと考える思考が、僕なりのアイデンティティーなのかもしれない。だけど、勉強とかになると嫌だなって。まず、物覚えが悪い。覚えるのに人の倍は努力が要る。だから出来のわるい子供や学生の気持ちはよくわかる(笑)。そんなこと、あんまり皆さんには喋ってなかったですね。恥ずかしい話だから。

INTERVIEW
2022/08/01
#内藤廣
#糸川英夫#山口文象#林田英治#鹿取克章#佐藤寛#近藤潤#室町正志
NO.53
内藤廣 vol.2『文化はのりたまじゃない』

土地に根差した何か、文化の在り方って、世界中みんなで考えていかなきゃいけないんじゃないかと思う。今までは文化っていうのは添え物だと、みんな思ってたわけです。あるいは経済的な活動の余剰と思われてきたんじゃないかな。景観にしたって、デザインの話でも、表面だけちょこっと何かするものだと。まあ、のり玉みたいなもんだよね(笑)。要するに、ある種、なめてたんだよ。翻って、さっきのウクライナの話とかフィンランドの話になると文化こそが存立のベースだっていうことになってる。なんでそんなふうになってるかって、文化的危機にさらされてないからだよ。

INTERVIEW
2022/07/28
#内藤廣
#アルヴァ・アアルト#イヴァン・イリイチ
NO.52
内藤廣 vol.1『景観とはなにか?いま一度考える』

本当だったらさ、そんなものは昔の人はみんな持ってた共通感覚っていうか、本来はそういう類のものだよ。でも、それが壊れてきたわけだから、その過程で落としてきたものがたくさんあるわけじゃない。それが全体に今、「じゃあどこに残ってるの?」みたいな感じになってるんじゃないかと思うんだよ。極論を言えば、生産や防災、つまり人が生きるための必然性から切り離された景観に根拠や本質を問いかけるなんて無理なんじゃないかな。問題は、資本主義というのが、僕らが考えている以上にパワフルだっていうことです。そうしたら、外部的な仕組みで少し歯止めをかけるしかやりようがないですよね。そんな感じ。

INTERVIEW
2022/07/24
#内藤廣
#篠原修#中村良夫
NO.48
Emi Evans vol.6『曇天の雨と土から、熱帯の夢を見た』

感動して思い出に残っている場所は、バリ島のジャングル。不思議な雰囲気で、暗い中からいろんな生き物が出てきて、ちょっと怖いけど興味深い。イギリスにはない風景に小さい頃から憧れていて、部屋の壁にRainforestのポスターを貼っていたわけ(笑)。ちょっと恥ずかしい話だけど、10歳頃まで、寝る前にぬいぐるみを皆出して、布団で舞台をつくって演技するみたいに遊んでいた。壁に長くRainforestの絵を描いて、森の中の世界に、私がタイガーで、クマさんとか、パンサーとか、いろいろ。子どもの頃のイマジネーションの中で、ずっとそういう夢を見ていた。

INTERVIEW
2022/06/08
#エミ・エヴァンス
NO.47
Emi Evans vol.5『イギリス、日本、原風景の記憶』

ノッティンガムは寒くて、ずっとこもっている感じ。雨が降っていて暗い。だから、結構downerな雰囲気があるね。音楽も、しみじみとしたものが多い。イギリスの中でも“根暗”って言われたり。だから、今考えるとすごい素敵な街だけど、住んでいたときはなんて暗い所だと思って(笑)。それで一人っ子だったし、いつも落ち込んでいて、そういう暗い中で私には音楽しかなかった。でも、祖父祖母がドーセットという南の田舎の街に住んでいたから、牧場で小羊の出産を手伝ったり、牛の乳搾りをしていました。本当に幸せだったね。良い環境でした。たまたま牧場に囲まれたところに住んでいたけど、隣がファーマーとその奥さんが住んでいて、その羊が平気で庭に入ってきたり(笑)。

INTERVIEW
2022/06/03
#エミ・エヴァンス
NO.46
Emi Evans vol.4『風景を想像し、祈りを込める』

曲を作っているとき「もしもその風景の中にいたら」と考えます。歌っているときも、いつも何かの風景を自分の想像の中でイメージしていることが多いです。だから、録音が終わったら本当に、いい旅から帰ってきたみたいな気持ちになりますね。『ちむどんどん』は戦後の沖縄を舞台にしたお話ですけど、録音前にスタジオで沖縄の大きな海や自然の綺麗な風景を見せてくれて、とてもインスピレーションがわきました。沖縄の方言の響きをイメージしたそうで、曲中で“ニライカナイ”という響きが出てきますが、これは沖縄でとても大切にされている言葉なので、ドキッとするような感じがしますね。

INTERVIEW
2022/05/31
#エミ・エヴァンス
#ケヴィン・ペンキン#岡部啓一
NO.45
Emi Evans vol.3『言語に宿る精神と感情』

たとえばフランス語を喋っているときや、日本語のとき、英語のとき、それぞれの言語を喋るときに違う自分を少し出せるんです。脳みその違う所が動きだす。不思議な言葉を作るときも、ただ口の中の使い方が違うことによって、そこからインスピレーションが出てくる。強いconsonants(=子音)が多い言葉を使うと強い気持ちになるし、柔らかい音を使う言葉だと落ち着いていく感じがあります。それらの言葉から、いつも何かを感じるんです。だから、すごい切ない曲では、その切なさを表現できる美しい言葉は何だろうと調べたりして。面白いのは、その後にいろいろな人が「これはHebrewの言葉だ」とか、「これはフランス語だ」と書いていて、それは結構当たっています(笑)。

INTERVIEW
2022/05/28
#エミ・エヴァンス
#岡部啓一#横尾太郎
NO.44
Emi Evans vol.2『幻想の世界に命を吹き込む歌』

「いろんな種類の世界観をつくりたいから、いろんな異なる感じの、どこの国にもない言葉を作って歌ってください。」と。それまでとは全く違うと思いました。つくられた言葉で歌うことは全く初めての体験だった。遠い未来、言語がだんだん変わっていった世界。それはこういう風になるかもしれないというイメージ。だから、とにかく今まで聞いてきたいろんな国の言葉、英語、フランス語、ポルトガル語、スペイン語、ドイツ語、ウェールズ語、あとそれにプラス他の言語も入れて、いろんな歌をずっと聴いてその音を捕まえていき、それで歌詞が出来上がりました。

INTERVIEW
2022/05/25
#エミ・エヴァンス
#岡部啓一
NO.43
Emi Evans vol.1『声に自信を持てるまで』

自分じゃないことを出そうとするのが気持ち悪くて、「このままでは、もう続けられない」となりました。だから、独立したんです。自分が作りたい音楽を作る。それが作れないと意味がない。だから、本当に音楽の世界は厳しくて大変と分かったけど、それが良い機会にもなりました。もう怖いことがなくなった。むしろ、一番やりたいことが確認できた。それから大学を辞めて、音楽の仕事を増やしました。教会や、ホテルラウンジで歌う仕事もありました。ジャズの曲や、フランス語のシャンソンの曲、ポルトガル語のボサノヴァの曲など、いろんな種類の曲にも挑戦してみて、ちょっとずつ覚えていって、いろんな所で歌えるようになったんです。

INTERVIEW
2022/05/22
#エミ・エヴァンス
NO.42
新津保建秀 vol.7 『生きること、生(なま)であること』

ウクライナの報道を見て、日本が戦争になったら恐ろしいなと思いました。そういうものに全く引っ掛からないような所に住むのがこれから良いのかなとか、本気で思いましたけどね。そうなったら福生とか横須賀とかあるから、この辺りは心配ですよね。どこがいいのか。長野は好きですけどね。妻の出身が長野だから、家族でよく行くんですよ。ただ、ものすごい好きな所があるかというと、今はそうでもないのかもしれない。今、住んでる土地も、家族の日常生活と、仕事の両立に便利な環境であるということで決めた気もします。

INTERVIEW
2022/05/19
#新津保建秀
#カール・ポランニー
NO.41
新津保建秀 vol.6『風景を撮ること、人を撮ること』

風景を人物のように撮って、人物を風景のように撮るというか。その向こうにあるものを眼差して撮る感じです。写真の仕事を始めようと思った当時、写真のなかに描かれる私性――どれだけ被写体とのあいだに深い関係性を構築して写真の中に暗示できるか、それがリアリティだという傾向が大きかったように思います。それが顕著だったのが、被写体が女性のときで、篠山さんや荒木さんの存在もとても大きかった。ただ、そこで語られていたことが、とても狭い意味のなかで捉えられているのではないかという違和感がありました。自分の中では別の解釈があったので始めたのが、いま言ったような被写体との向き合い方です。

INTERVIEW
2022/05/16
#新津保建秀
#曽根裕#ニコラ・ブリオー#evala#岡瑞起#乙一#ナン・ゴールディン#ラリー・クラーク#荒木経惟#篠山紀信
NO.40
新津保建秀 vol.5『見えるもの/見えないものの往還』

〈見えないもの〉という問いには、見たり触れたりすることが可能なものと、私たちの心のうちにあるものとの相互作用への関心が含まれています。私が生まれて数年を過ごした西荻窪の善福寺公園と、そこから流れる川沿いの道にてドローイング制作したとき。紙を地面の上に置き、私自身の手のひらと描画材を介して触れ、イメージを探っているあいだに、手のひらから伝わる地面の感触だけではなく、その土地と繋がった記憶、時間、それらを含んだ場所そのものに触れている感覚になりました。身体と意識のなかの微妙な認識の経路が、静かにスッと開いたような感じがしたんですよ。もし、縁もゆかりもない土地で同じ作業をしていたら、このときの経験はなかったかもしれないです。

INTERVIEW
2022/05/05
#新津保建秀
#飯沢耕太郎#夏目漱石#デレク・ジャーマン
NO.39
新津保建秀 vol.4『写真のリアリティーと無意識』

長くやってると、そうしたことは無意識にいろいろ計算してるんだと思うんですよ。対象をばって見て、「この画面に含まれてる記号は何だろう」「その中のプライオリティーは何だろう」と、瞬時に考えてる気がする。ただ、自分としては、そうしたものに回収されない「なんでこれ撮ったんだろう?」っていう画像のほうが引っ掛かりますね。「なんでこんなの写っちゃったのかな?」というのは、たまにあってね。写真は単なる見た“跡”みたいなものに過ぎないから、見たときの心の経験を、違う人が追体験できたらいいなと思ってやってます。

INTERVIEW
2022/05/02
#新津保建秀
#東浩紀
NO.38
新津保建秀 vol.3『空間の”奥”をとらえて』

いつも不思議なんですけど、たくさんの人が祈りを繰り返してきた空間って、なにか念みたいなものが蓄積している感じがありますね。海外に長期滞在したとき、パリの6区にあるサンシュルピス教会が近くて、たびたび訪れていました。中に入ると、しーんとした気持ちになるのです。上賀茂神社の境内も好きです。人が自身の心の中に深く入っていこうとする空間が持つ、あの感じ。人が死を迎える場所がそういう良いものを湛えていたら、安らかに死ねるんじゃないかな。病院で親しい人の最期の瞬間に立ち会うたび、人が物的に扱われて忙しく旅立っていく。だから、もうすこし余韻のある最後というか、そういうものが病院とかにできたらいいのかなあ。

INTERVIEW
2022/04/26
#新津保建秀
#北川一成#朝倉健吾#槙文彦#隈研吾#ジョセフ・コーネル#バルテュス#ジョナス・メカス
NO.37
新津保建秀 vol.2 『建築家たちとの邂逅』

難しい語彙が多いですよね。でも、そのとき、彼らに共通しているように感じたのが、造形的な新しさよりも、もっと写真では記述できない部分を探っているように思えたことです。目に見える形よりも、身体的な感覚や心の経験みたいなものをつくりたいのではと、彼らが語る言葉から感じたんですね。自分もそこが撮りたいと思ってたから、建築と写真では扱っている材料は異なるものの、お互いの関心が重なっていた。これはうまく言えないんだけど、モノとしての建物はただの取っ掛かりにすぎなくて、モノの向こう側にある、心の世界に作用することをやってるんだというのは思いましたね。

INTERVIEW
2022/04/23
#新津保建秀
#原田真宏#原田麻魚#五十嵐太郎#平田晃久#中村拓志#ヨコミゾマコト#北川一成#増田徳兵衛
NO.36
新津保建秀 vol.1『被写体の心の在りかを探る』

自分は西荻で生まれたんですけど、武蔵野の独特の佇まいがあってですね。だんだん消えてきちゃったけど、国分寺崖線の木々がおおい茂っているところはそれが残っているような気がします。原風景みたいなものですかね。郷愁があるんでしょうね。誰かが作ったものを写真に撮るときは、共通の接点や感情移入できるところを見出すと取り組みやすいのです。これは共同作業の場合もそうで、なるべくその人の最近の関心事とか、土地の思い出を聞くようにしています。人はそれぞれ自分の心の中で意味で区切られたものと、目の前のものとを対比させて見てるから、その人が好んでいることや探っていることの中に、自分が共感できる部分を探ってやるという感じです。

INTERVIEW
2022/04/20
#新津保建秀
#槙文彦#東浩紀#藤村龍至#ドミニク・チェン#隈研吾#北川一成#川添善行#原田真宏
NO.35
伊藤遼太 vol.7 『作為なき作為をめざして』

たとえば、同じ現象に対して、それが否定的に映るか、よく見えるのか。放置されて汚いと思うのか、枯れてる、侘びてるから良いと思うのか。それはデリケートな問題ですよ。単一の事象で決まるものでなくて、周りとの関係性でもあって。時間を空間に宿らせるって、正直難しいなと思います。どうしても作為的になってしまいがちで…そういう意味では、茶室みたいな考え方は参考になる。物質がそれぞれ持ってるバイオリズムがあって、その力を借りる、それを調和させる。それぞれの物質の語りかけてくる時間が、その空間における用途とも重なって感得されるような在り方というんでしょうか。

INTERVIEW
2022/04/17
#伊藤遼太
NO.34
伊藤遼太 vol.6 『見立てと言語化の難しさ』

居心地がいい空間、ゆっくりできる空間というようなことを、みんな漠然と言うんですけど、それがどういう意識の構造に基づいているのか、どういう状態なのか、どういう物質が人間に作用をもたらしてるのか。何と何を組み合わせたら、どういう効果があるのか――それは自然現象と同じだと考えているので、科学的・言語的なアプローチで実現できるんじゃないかと。また、これが良い、面白いってことを見立てる人がどの分野でもいるんですよ。そういう人たちの勉強をして、自分の知覚や感覚を増やしていく。自分たちの感じ方や考え方に名前を付ける、他の人に分かってもらえるようにする――アートとか、哲学とか、数学とかもそうかもしれませんが、そういうことをしていくことが役割だと思うんです。

INTERVIEW
2022/04/14
#伊藤遼太
#木村敏
NO.28
樫村芙実 vol.5 『スポットライトは、その後に』

とにかく「お金を入れればいいことです」みたいな。当時からそういうのに違和感があったとまで言わないけど、納得していなかったんだと思います。ウガンダで仕事をすることになって、「ボランティアなんですか?いいことしてますね」って言われることがあるんですが、全然ボランティアでやってなくて、仕事としてお金をもらってやってるんです。職能として空間のことを考えて、長く使ってもらえるように。オブラートに包んだ方が良いんでしょうけど、寄付だけだと作ってお終いとなってしまう。それって受け取る側じゃなくて、あげる側のためなんですよね。

INTERVIEW
2022/03/27
#樫村芙実
NO.27
樫村芙実 vol.4 『どこまでつくり、どこから手放すのか』

ヘルマン・ヘルツベルハーのメーキングスペース/リービングスペース(Making Space / Leaving Space)をすごく気にしていて、どこまでつくって、どこまでつくらないかという話です。たとえばランドスケープに階段とかをつくると、そこを通らざるを得ない。だから、下面が強い。でも、入っていくと、天井が空間をなんとなく区切ってる。建築が人々の行為に対して、どのくらいやって、どのぐらいやらないのかっていうことです。地域に根付くこととともに、使いこなせるのかっていうのも大事なんです。ウガンダでも日本でも同じように、その人たちにとってどうなのか、っていうのを考えたいと思うんです。

INTERVIEW
2022/03/24
#樫村芙実
#ヘルマン・ヘルツベルハー
NO.26
樫村芙実 vol.3 『つくり替えられながらも残るもの』

この1階は本屋さんにしようとしてるんけど、近所の大学は文科大学で文系の学生さんが多い。ずっと住み続けるわけじゃない人たちですが、少しでも生活以外のものが滲み出て引き継がれていくようなアパートは面白い、ここで何かしら循環していったらいいなと。建築としては設備更新を考えることになります。これは木造で2階建てですけど、白くつくってる部分が閉じた壁になるんですね。木造だけど、今これを事務所の中では“遺跡”って呼んでいて(笑)。自分たちでも「木造だから“遺跡”とかあり得ないだろう!」って言ってたんですけど、木造の短い寿命の中でも、それを頼りに、つくり替えられながらも残ったらいいなって。

INTERVIEW
2022/03/21
#樫村芙実
NO.25
樫村芙実 vol.2 『人と建築、自然と建築、そのあいだで』

ランドスケープって長いし、広い。自分たちのできることは、小さいなと思うんです。そうは言っても、蚊もわくし、建築も何か対処しなければならないかと思っていたところ、HUMUSの方が、この場所で新たに雨庭をつくって、虫や植生がちゃんと育てば、人を悩ますような虫が発生しない生態系になるはずです、と。「建築ももっと広い流れの中でやんなくちゃいけないよな」となれたんですよね。「地域に建築は何ができるのか?」と考えるならば、結局どこであっても、そこの人たちと/どのぐらい/何をやれるのか。建築ができることばかりじゃないけれど、どのぐらいの囲いをつくるのか、っていうのに日々悩んでるんですよね。

INTERVIEW
2022/03/18
#樫村芙実
#霜田亮祐
NO.24
樫村芙実 vol.1『ウガンダから建築とランドスケープの話』

木も育ってて、いい木陰をつくってるんですけど、植栽の根が建物を侵食しそうなところまで張ってきちゃって、まずいね、と。何故ここに植えたのか話をすると、現場は引き渡しの期日が差し迫った状態で、でもウガンダの人達は結構のんびりしていて、すぐ仕事休んじゃったり、現場からいなくなっちゃったり。焦っていた私は、そのまま植えちゃったんです。そうしたら、あんなに大きく育ってしまったという…。この植栽、ほとんどの場合は、牛乳とか水を入れるビニール容器や袋をパックにして、苗木や草を売っていたりするんです。このときは、これらを平面図にゴリゴリ色鉛筆で塗っていって、「この辺は芝生」、「ここはペーブメント」っていう風に描いていったものです。

INTERVIEW
2022/03/15
#樫村芙実
NO.23
丹羽隆志 vol.9 『エントロピーが最大になる場所を目指して』

白山が見えるんですよ。雪が降ったとき真っ白な風景の中にシンボルのように浮かび上がるんです。周りは田んぼなので平らなんですけど、用水路に雪が積もると地中熱で下の方が溶けて、トンネルみたいな中で遊んだりとかですね。シークエンスが好きで、その辺も子供のころの体験から来ていると思います。ハノイは、自分のエントロピーが最大化されるというか、エネルギーをもらえる。そう考えると、潰えるときも、自分のエントロピーが最大になる場所で潰えたいっていうのはあるかもしれないですね(笑)。

INTERVIEW
2022/03/12
#丹羽隆志
#崎谷浩一郎
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