土景 -GROUND VIEW-

大地の見かたを自分のものに、土景。

ALL INTERVIEW REVIEW NOTICE
NO.78
西倉美祝 vol.7『市民社会の小さな“公”』

日本の“公共的空間”って市民がつくってきたと思うんです。フランスのように市民がパークをパブリック化したみたいな経緯がないから、公的空間や公共施設が、公共的になるというプロセスをちゃんと辿ってないんですよね。だから、勝ち取ってきたものではないんです。けれど、界隈としてつくってきたという経験はあると思っていて、これからはそこを伸ばすしかないと思うんです。民間の空間が、できる範囲で公共的になるというのは意図的にも考えていますし、社会もこれからそうなるだろうなと。日本人が市民社会を自分で実現したということが、チャンスとしては明治維新のときと、第2次世界大戦の前後であったと思うんですけど、その機会を逸してしまったので、パブリックネスというのをヨーロッパと同じような形でつくることはできないですね。

INTERVIEW
2023/06/10
#西倉美祝
#原広司#永山祐子
NO.77
西倉美祝 vol.6『空間体験=多様体との遭遇』

オルタナティブ・パブリックネスは、建築物1つの設計だけで満たされる公共性論ではないです。不完全だけど個性的な空間を、一つの空間や建築物、都市の中にいっぱい重ねて、人が自由に移動し、選択できるように、この重ね合わせを一つの場所に、どれだけぎゅっと入れることができるかのというところが目標です。行為を選択しているという点については、実際そうなんですけど、でも、僕ら人間なので、選択しないって無理じゃないですか。生きる過程で必ず何かを選択してるんです。だから、「人間は選択している」という前提に立ってやった方がいいというのが僕の意見です。所与と選択の話だと、自分で選択してるということが、他人にとっての遭遇だったりする。つまり、所与と選択って万人が共有してるものじゃないと思うんです。

INTERVIEW
2023/05/30
#西倉美祝
#伊東豊雄
NO.76
西倉美祝 vol.5『一つに頼らず、繋がりに頼る』

お酒を造るというのは一つの例ですけど、そのために土地が満たすべき条件と、その土地の歴史や共有されている文化というものは、切り分けつつ共存することが出来ると思います。その土地の複雑怪奇でいかようにも解釈できる大きな塊というか、お酒の話とは別のラインから見えるいろんな土地の豊かさもあるじゃないですか。そういう話は、その時々の要請に合わせて、切り離すこともできるし、くっつけて考えることもできる。それによって、両方が活きた状態になるということがあるのかなと。たとえば、そこに新幹線が通っているとか、昔ここで武将が合戦をした歴史があるとか、坂本龍馬が旅行に来ただとか、お祭りが夏の時期にあるとか、町内会があるとか、

INTERVIEW
2023/05/19
#西倉美祝
#ウラジミール・レーニン#小倉ヒラク
NO.75
西倉美祝 vol.4『建築の公共性を再考する』

土木とか都市デザイン系の公共性というのは、物理的なデザインだけではなくて、社会学とか政治学における公共性に近しいものだと思うんです。それと比べると、建築にできることは少ないと思うんです。建築物一つ一つに関して言えば、当然使う人も限られているし、サイズも限られている。でも、だからこそできることもあるだろう、ということで、そういう都市や土木の方面とは違うところから考え直して論を構築しようと。できること/できないことがあるというところですね。あとは、僕がそういうことについて、なおざりにしながらやっていくと、耐えられなくなってしまう性質なので。

INTERVIEW
2023/05/05
#西倉美祝
#泉山塁威#藤本壮介
NO.74
西倉美祝 vol.3『見立て、重ね、空間をつくる』

一つは、船の象徴的な形。もう一つは、機能主義的な形。それから、自分で動かして利用者の人たちが独自につくる空間体験もあるし、家具の一部が入れ替わる新陳代謝をしていくことも考えられます。こうした四つの形が今後想定される。定期的にオフィスに伺わせて頂くと、御施主様や利用される方々が、がんがん家具も動かすし、自分たちに合うように家具を切ったりもするんですよね。どんどん人が入れ替わって、空間が新陳代謝していくということは、もともとの形から変わっていくということですけど、家具それぞれの機能は持続的に関わっていて、だんだん使っていくうちに御施主様たちが使い方を見いだしていきながら、フィットしなくなった家具は処分されて、移転の際には新しいオフィスに行く家具もあれば、この場所に残るものもあるし、あるいは他の人に譲られるということもありました。

REVIEW
2023/04/28
#西倉美祝
#為末大
NO.73
西倉美祝 vol.2『商業空間にあり得べき公共性』

自分の中では「商業空間や民間の空間というものが何かしら公共的である」ということにリアリティーがあったので、とにかく商業空間のリサーチをしたいと思ったんです。たとえば、物を買うという行為は、棚にある物を取ってレジに持っていくというように、決まった動線に従って、決まった動きをするという型があると思いますが、たまに、それから外れて自由なことしてる人というのがいますよね。その変なことをしている人を見つけることで、商業空間の公共施設と異なる可能性を考えるきっかけになるのではないかと思い、「予期していない面白いことをやっている人を見つけてこよう」と。

REVIEW
2023/04/24
#西倉美祝
#川添善行#山本理顕#菅原大輔#大野力
NO.72
西倉美祝 vol.1『オルタナティブ・パブリックネスのすゝめ』

自分が生まれ育ったのは千葉県柏市の端っこの方、郊外でも田舎でも都会でもない所で、コンビニの前や駐車場で遊んでいたのが原風景なんです。 でも、大学に入って建築の勉強を始めてみると、広場や都市、ストリートなどの言葉で社会と建築の関係を理解させる教育がされていて、公共施設が社会をかたちづくる一番強いものとして扱われていました。自分が考えている社会像と、大学で教えられている社会像に大きな違いがあったんです。 それなら、自分なりにリアリティーのある社会像――つまり国家とか地域とは別の軸で、世界中につくられている民間の空間から考えられないかと。

REVIEW
2023/04/18
#西倉美祝
#ハンナ・アレント
NO.70
【一周年記念】全記事無料公開キャンペーン中!

皆様の御支援のおかげで、当サイトはリリースから一周年を迎えることができました。
それを記念して、この度、
全記事の無料公開キャンペーンを実施します!
通常はプレミア会員の方しか見られない記事も、キャンペーン期間中はすべて無償で御覧頂けますので、
是非この機会にお見逃しなく!

期間:2月23日~3月31日
対象:アーカイブ全記事

NOTICE
2023/02/23
NO.68
原広司 vol.4 『想像と創造:花も紅葉もなかりけり』

要するに、秋の夕暮れっていうときに、「花も紅葉も なかりけり」っていったときに、花もあるし、花もないしというふうに解釈しないと、なんであの歌がそんなにいいのか伝わらない。つまり、二重映しってあるわけじゃないですか。だから、あると、ないとが、同時に見える世界っていうのがすごいんじゃないかなと言ったわけだよ。非現実的な部分と現実的な部分、イマジナリーなものとリアルなものとを同時に、たとえば、ある谷が見えたときには、その谷は本当の形と、そうでないフィクショナルな形が同時に見えているというようなことがある。

INTERVIEW
2023/03/16
#原広司
#ミース・ファン・デル・ローエ#藤原定家#松本幸夫#ノーム・チョムスキー#西行#エトムント・フッサール#ニコラス・クザーヌス
NO.67
原広司 vol.3 『二千年を超える形而上学を問え』

こういう話を建築はしないんじゃないかと思っているのが大間違いで、建築は絶対にするんですよ。そういうことを踏まえて、僕は長々とソローとエリオットの話をした。ただ、そうではあるが、その人たちには神様がいたんじゃないの?って。僕たちにはいない。とすると、どうするの?そういう問いでいいんじゃないかと思うんです。それは形而上学的な問いであってさ。子どもにでも分かるし、大人の専門家であっても分からない。それと、人を信用して生きたほうがいいんじゃないか。時間があるんだから、みんなで考える。いろいろ十分考えられるんじゃないか。そんなせっかちにしなくてもいいんじゃないか。

INTERVIEW
2023/03/07
#原広司
#アルベルト・アインシュタイン#アリストテレス#フリードリヒ・ヘーゲル#紀貫之#クルト・ゲーデル
NO.66
原広司 vol.2 『丹下健三の家と、柳田国男の書斎』

モデルが近いところにあるということはすごく重要でさ。その近くにいるのといないとでは全然違う。当時は、建築家なんてどうやったらなれるのか、全然分からないんだよね。それで、丹下さんは建築家はどうのと、いろいろ言ってくれるんだけど、丹下さんの奥さんに「僕不安で、何もやっていないし、建築もまだやろうとも何とも思っていないんですけど、大丈夫ですかね?」って言ったら、「大丈夫。あなた、できるわよ。」なんて言われてさ(笑)。「あなたは丹下さんのような建築家になる」って、もう決め付けている感じ。そんな感じの雰囲気があった。

INTERVIEW
2023/03/04
#原広司
#丹下健三#カール・マルクス#大江健三郎#磯崎新#柳田國男#山本理顕#藤井明#伊藤恭行#ル・コルビジェ#ジャン=ポール・サルトル#アルベール・カミュ
NO.65
原広司 vol.1 『戦災、飢餓、貧困。神様はいなかった。』

私が建築を始める前に戦争があったわけです。多摩川の下流の、川崎に何年か住んでいたけど、そこで素晴らしい世界が一瞬あって、それから戦争になった。空襲になると、更地になって、長野県の飯田市に逃げていった。が、待っているのは飢餓と貧困しかない。草の1本も生えていない。人間の食べれるものがないんですよ。生き物でも何でも、イナゴであろうが何だろうが全部食べてしまったわけですよ。みんなが探したんです。その間、一度も神が助けてくれると、そんな発想したこともなかったね。つまり、森の生活の中にいた。そのとき、俺は森の生活をしたかもしらんな。それに近いんですよ。

INTERVIEW
2023/02/27
#原広司
#ジャン=ポール・サルトル#アルベール・カミュ#内田祥哉
NO.64
原広司 vol.0 『序章:世界の実存と虚構性』

「重要なことはフィクショナリティーなんだよ。つまり、虚構性。」心外な言葉が急に飛び出てきたように思われた。しかし、原先生は次のように言い切るのであった。これまでさまざまな建築設計や都市計画に関わってきたが、けっきょく建築はインフラストラクチャ―に触らせてもらえないのだから“比喩的に現れる”ほかない、と。だからこそ、それらはフィクションを必要とするのだという。 そして、そのことを考えるために重要な参照点だとして、2人の文学者の名前を挙げた。一人はH.D.ソロー、そしてもう一人はT.S.エリオットである。

INTERVIEW
2023/02/24
#原広司
#吉見俊哉#見田宗介#隈研吾#小嶋一浩#ヘンリー・デヴィッド・ソロー#トーマス・スターンズ・エリオット#ラルフ・ウォルドー・エマーソン#ウォルト・ホイットマン#エミリー・エリザベス・ディキンソン#ハーマン・メルヴィル#鴨長明#マックス・エルンスト#ヴェルナー・カール・ハイゼンベルグ#エルヴィン・シュレーディンガー#伊藤遼太
NO.63
【特別企画】『都築響一、工藤正市の魅力を語りつくす』(動画あり)

それだけではない、東京の人は「厳しくて寒くて辛い青森が見たい」。でも、工藤さんが撮ったのは「悲惨なものは一つもない。貧乏な暮らしの中にもある小さな喜びの瞬間」。「青森の人は“こういう青森を見てほしい”、でも東京の人は“こういう風に青森を見たい”」という視線の温度差。「メディアの眼は歪んでいるのを思い知らされる」と静かに憤る都築さん。それは町中の心揺さぶられる表現を探して日本中をめぐり、取材してきた都築さんの実感からくるものだろう。SNSで話題になり、世界からも賞賛の声が届く工藤正市の写真。だが今もその写真が美術館で展示されることはない。

REVIEW
2023/02/23
#都築響一#小川純子
#工藤正市#土門拳#木村伊兵衛#マーシャ・イヴァシンツォヴァ#ザハリア・クズニア#田中忠三郎
NO.62
篠原修の「面白かった本」その8

日本映画の巨匠と言えば、様々な名前が挙がるでしょうが、まあ黒澤明、小津安二郎を挙げるのが穏当な処でしょう。この両名に、今回は山田洋次を加える事にします。まづ黒澤明。一緒に脚本を書いていた橋本忍の『複眼の映像』が秀逸でした。2 ヶ月も旅館に泊まり込みで生活を共にし、朝10 時から午後5 時まで脚本の執筆。脚本は同じ場面を競争で書き、良いものを取る。こんな辛抱ができますか。大変な忍耐力とエネルギーです。僕はできそうも無い。家に居て原稿を書いている時でも、すぐに外の散歩に逃げたくなる。この本を読んだ時、我々は「まちづくり」でこんなに集中して考えているだろうかと反省させられました。

REVIEW
2022/11/04
#篠原修
#橋本忍#黒澤明#貴田庄#小津安二郎#新田匡央#山田洋次
NO.61
篠原修の「面白かった本」その7

どういう風に本を読んでいるか、その結果どんなよいこと、まずいことが起こったかを思いつくままに書くことにする。まず第1に、専門および専門に近い人の本は余り読まない。第2に、ルポルタージュの類の本は読まないことにした。第3に、都市や景観に興味をもっている文科系知識人の本を好んで読む。第4に、独自の研究分野を拓きつつある学者の本もよく読む。第5に、専門には全く役に立たないエッセイの類。これを最も好んで読む。今ではもう1つの読み方が加わっている。1冊の本から1つでもヒントが得られれば、もうけもの。いよいよ読み方が邪道になってきたのです。

REVIEW
2022/09/20
#篠原修
#夏目漱石#永井荷風#内田百閒#丸谷才一#山崎正和#梅原猛#梅棹忠夫#養老猛司#多田富雄#網野善彦#寺田和巳#吉田健一#堀田善衛#團伊玖磨#半藤一利#玉村豊雄#藤原正彦
NO.60
篠原修の「面白かった本」その6

今回の本は、面白いというよりショックを受けた本。多少週刊誌的になりますが容赦ください。 『安部公房とわたし』。帯に「文壇騒然」とあります。それはそうでしょう、果林が安部公房の愛人だったというのは誰も、ごく親密な人以外誰も知らなかったから。安部公房は漱石の次に尊敬している作家で、本当はノーベル文学賞をもらって然るべき作家でした。読んでいる内に段々嫌な気分になってくる事を避けられませんでした。後味は悪いのですが、読んで良かったとは思います。こういう安部公房もあったのだという意味で。

REVIEW
2022/09/01
#篠原修
#山口果林#安部公房
NO.59
篠原修の「面白かった本」その5

今回は喜劇に関する本でいきます。 今回のお勧めの本は小林信彦の『日本の喜劇人』新潮文庫で、古川緑波、榎本健一以下の代表的な人物が論じられています。喜劇と言っても世代差があるので、若い人には違和感があるかもしれませんが。篠原は1945年生まれなので記憶に残っているのは1950年代後半からのもの。中・高・大と大いに楽しんだのに、その手の本を読んだのは極最近で、もっと早く読むべきだったと後悔している。ドリフターズから子どもっぽくなり、今のお笑いタレントの質の低下は見るに耐えません。「テレビの黄金時代」も併読されるとよろしいかと。ただ見ていないと本では分からないかとも思いますが。

REVIEW
2022/08/24
#篠原修
#小林信彦
NO.58
篠原修の「面白かった本」その4

約束通り、前回に続いて建築。 伊東さんの本を受け取ってからすぐに隈研吾さんから本が送られて来ました。題は『小さな建築』岩波新書。彼のイメージする小さな建築は、水のレンガ(よく工事で使っている水を入れる赤いタンク)やハニカム、折るや膨らますの構造です。これらとインフラとの関係には触れる所なし。テーマは「自立」なのに。自立といえば上下水道、電気などのインフラに頼らない事を意味するので、内藤さんがよく引き合いに出すモンゴルの「ゲル」が頭に浮かぶのですが。何を言いたかったんですかね、彼はこの本で。

REVIEW
2022/07/21
#篠原修
#隈研吾#内藤廣#南雲勝志#山本夏彦
NO.57
内藤廣 vol.6『理解しあえるということ』

本当にいい音楽に接したときっていうのは、体が熱くなって、背筋がゾクゾクして、この一秒一秒が過ぎてほしくないって思うような感じがある。そういう体験全部が僕のものづくりとか空間とか考えるときに重なってくるっていうのはあるんです。多分あらゆる芸術もそうなんだと思う。結局のところ、分かり合えるかどうか。それが悲しさかもしれないし喜びかもしれないけれど。僕らの社会の中でどれだけそういう場所や時間をつくれるか、そうしたものを通して理解し合えていることを感じ合えるのが大事なんじゃないかなと思います。

INTERVIEW
2022/08/13
#内藤廣
#エルネスト・ショーソン#岩城宏之#武満徹#アルトゥール・ルビンシュタイン#スヴャトスラフ・リヒテル#マルタ・アルゲリッチ#グンドゥラ・ヤノヴィッツ#ヘルベルト・フォン・カラヤン#篠原修#白川静
NO.56
内藤廣 vol.5『5歳の頃の母親の膝の上』

やっぱり『市民ケーン』かなと思うんだよな。最後に暖炉で燃やされる子供用の橇が出てくる。帰っていく場所って、ずっと思い出すと、これはちょっと誰にも言っていないけど、考えてみたら、“5歳の頃の母親の膝の上”って答えるのかな。そのときの光景って何となく覚えてるんです。描こうと思ったら描けそうな感じ。それは多分、守られてる状態なんだ。そのときすごく安心したんだと思うんだよね。どこに帰っていくのかっていったら、そういう所かなっていう気がする。そのときの膝の温かみとか柔らかさだとか。そういう気がするんだよね。

(少し思案して…)あの、たとえばね、
死っていうのを自分のこととして考えると当然それしかないんだけど、この年になると他者性みたいなのを考えるよね。つまり、後の人間がどう考えるかっていうことの方が大事で、僕はどうかな。どうでもいいかなと。要するに、たまに思い出したりするのに何もなきゃね。記憶が遠のいて、忘れて日々を生きている。やっぱり、何か思い出すきっかけみたいなのは必要なんだよ。宗教はそんなに信じていないけど、墓みたいなのは個人として思い出すきっかけにはなるよね。そういうきっかけが要るようだったら、作っておけばいいし。そのぐらいの感じですかね。なんだったら陸前高田の「海を望む場」(※ 高田松原津波復興祈念公園)で献花してもらえばそれで良しとするっていうんで、広田湾の真ん中にでも撒いてもらうかな(笑)。

INTERVIEW
2022/08/09
#内藤廣
#岩本健太#隈研吾#妹島和世
NO.55
内藤廣 vol.4『求めなければ生まれない』

学生の時は月一遍ぐらい山口さんの所に行って話し込んでいたんだけど、聞いたことがあるんですよ。「おじさん、どうしたらそういう交友関係を持てるんですか」って。そうしたら、「求めなさい」って言われた。自らね。求めなければ生まれない、だから求めなさい。そうじゃないと繋がらないって。そう言われたからっていうより自然とそうなったのかもしれないけど、それ以降僕の知己を得た人たちは宝物、本当にかけがえのない素晴らしい人たちにこれまで出会ってこれた。これが僕の人生でのいちばんの贅沢。それが栄養になってるのかもしれないね。

INTERVIEW
2022/08/05
#内藤廣
#吉阪隆正#山口文象#猪熊弦一郎#三枝博音#中川幸夫#石元泰博#フェルナンド・イゲーラス#アントニオ・ロペス・ガルシア#フェリックス・グランデ#山田洋次
NO.54
内藤廣 vol.3『建築家・内藤廣になる前の話』

僕はそんなに頭のいい人間じゃないので、子どもの頃から苦労はしましたね。慢性鼻炎か何かでいつも鼻が詰まっていて、記憶力がよくなかったのはそれだと思ってるんだけど(笑)。論理的に考えるっていうよりは、ぼーっと考えるタイプだった。ある種適応力を欠いていて、このぼーっと考える思考が、僕なりのアイデンティティーなのかもしれない。だけど、勉強とかになると嫌だなって。まず、物覚えが悪い。覚えるのに人の倍は努力が要る。だから出来のわるい子供や学生の気持ちはよくわかる(笑)。そんなこと、あんまり皆さんには喋ってなかったですね。恥ずかしい話だから。

INTERVIEW
2022/08/01
#内藤廣
#糸川英夫#山口文象#林田英治#鹿取克章#佐藤寛#近藤潤#室町正志
NO.53
内藤廣 vol.2『文化はのりたまじゃない』

土地に根差した何か、文化の在り方って、世界中みんなで考えていかなきゃいけないんじゃないかと思う。今までは文化っていうのは添え物だと、みんな思ってたわけです。あるいは経済的な活動の余剰と思われてきたんじゃないかな。景観にしたって、デザインの話でも、表面だけちょこっと何かするものだと。まあ、のり玉みたいなもんだよね(笑)。要するに、ある種、なめてたんだよ。翻って、さっきのウクライナの話とかフィンランドの話になると文化こそが存立のベースだっていうことになってる。なんでそんなふうになってるかって、文化的危機にさらされてないからだよ。

INTERVIEW
2022/07/28
#内藤廣
#アルヴァ・アアルト#イヴァン・イリイチ
NO.52
内藤廣 vol.1『景観とはなにか?いま一度考える』

本当だったらさ、そんなものは昔の人はみんな持ってた共通感覚っていうか、本来はそういう類のものだよ。でも、それが壊れてきたわけだから、その過程で落としてきたものがたくさんあるわけじゃない。それが全体に今、「じゃあどこに残ってるの?」みたいな感じになってるんじゃないかと思うんだよ。極論を言えば、生産や防災、つまり人が生きるための必然性から切り離された景観に根拠や本質を問いかけるなんて無理なんじゃないかな。問題は、資本主義というのが、僕らが考えている以上にパワフルだっていうことです。そうしたら、外部的な仕組みで少し歯止めをかけるしかやりようがないですよね。そんな感じ。

INTERVIEW
2022/07/24
#内藤廣
#篠原修#中村良夫
NO.51
篠原修の「面白かった本」その3

伊東さんが本を書いた動機は明快で、東日本大震災を機に建築を根底から見直さねばならないと感じたからでしょう。重要だと思う伊東の記述は「いわば目に見えない資本を視覚化する役割を担うのが建築家であって、彼らはその蓄積される場所を求めて移動を繰り返す。それが現代建築家なのです」。つまり、篠原流に言うと現代建築家は資本家の「下僕」だと言っているのでしょう。次は余りに正直で、笑ってしまった処。「つまり私は、歌(小生注、演歌)を通じてなら地域の人々とコミュニケーション可能なのに、建築を通じては必ずしもうまくコミュニケーションできていなかったのである」という下りである。聴いたことはないが、伊東さんは八代亜紀をはじめとする演歌は相当に上手いのだそうだ。そうだろうなあ、伊東さんの建築は地方の爺さん婆さんの心には響かないだろうと思う。

REVIEW
2022/07/15
#篠原修
#伊東豊雄
NO.50
篠原修の「面白かった本」その2

ある日本屋で失敗しても大した金でもなしと嵐山光三郎の「文人悪食」という本を購入。これが凄かった。漱石を始めとする名だたる作家、文人の食生活を調べ上げ、何を食っていたか、何が好物だったのかを詳細に書いている。 文章からでは伺えない文人の性癖が分かって、一読を勧める次第。嵐山は、一年の内八ヶ月は旅行をしているのだそうで、この「芭蕉紀行」はその面目躍如。芭蕉を伊賀上野から追って、奥の細道に至るまで足で歩いた芭蕉論になっている。本当に歩いたとは凄い。サラリーマンにとっては羨ましい。芭蕉が嫌いで、一茶信奉者の金子兜太。言わずとしれた著名な俳人。本は『荒凡夫 一茶』。

REVIEW
2022/07/10
#篠原修
#嵐山光三郎#田中善信#金子兜太#松尾芭蕉#小林一茶
NO.49
篠原修の「面白かった本」その1

結構暇なのと出張が多いので、相変わらず手当たり次第に本を読んでいます。経済の事は全く分からず、また金融などの分野は嫌いなので(これでは金は溜まらない)、手にする事もなかったのですが、東大に散歩がてら生協(これも嫌い、何故だか分かりますよね)の図書に行き、ブラブラと本を漁った処、岩井さんの名前を見つけました。何かの縁だと思い、本を買い事務所で読んだ処、これが面白かった。理由は色々ありますが、主な処を二つ。岩井さんの経済の本は、三分の一が経済、三分の一が哲学、三分の一が社会学だという点です。つまらない需要供給曲線や均衡の算数などは皆無。流石、「経済思想」が専門と称するだけの事はあります。

REVIEW
2022/07/07
#篠原修
#岩井克人
NO.48
Emi Evans vol.6『曇天の雨と土から、熱帯の夢を見た』

感動して思い出に残っている場所は、バリ島のジャングル。不思議な雰囲気で、暗い中からいろんな生き物が出てきて、ちょっと怖いけど興味深い。イギリスにはない風景に小さい頃から憧れていて、部屋の壁にRainforestのポスターを貼っていたわけ(笑)。ちょっと恥ずかしい話だけど、10歳頃まで、寝る前にぬいぐるみを皆出して、布団で舞台をつくって演技するみたいに遊んでいた。壁に長くRainforestの絵を描いて、森の中の世界に、私がタイガーで、クマさんとか、パンサーとか、いろいろ。子どもの頃のイマジネーションの中で、ずっとそういう夢を見ていた。

INTERVIEW
2022/06/08
#エミ・エヴァンス
NO.47
Emi Evans vol.5『イギリス、日本、原風景の記憶』

ノッティンガムは寒くて、ずっとこもっている感じ。雨が降っていて暗い。だから、結構downerな雰囲気があるね。音楽も、しみじみとしたものが多い。イギリスの中でも“根暗”って言われたり。だから、今考えるとすごい素敵な街だけど、住んでいたときはなんて暗い所だと思って(笑)。それで一人っ子だったし、いつも落ち込んでいて、そういう暗い中で私には音楽しかなかった。でも、祖父祖母がドーセットという南の田舎の街に住んでいたから、牧場で小羊の出産を手伝ったり、牛の乳搾りをしていました。本当に幸せだったね。良い環境でした。たまたま牧場に囲まれたところに住んでいたけど、隣がファーマーとその奥さんが住んでいて、その羊が平気で庭に入ってきたり(笑)。

INTERVIEW
2022/06/03
#エミ・エヴァンス
NO.46
Emi Evans vol.4『風景を想像し、祈りを込める』

曲を作っているとき「もしもその風景の中にいたら」と考えます。歌っているときも、いつも何かの風景を自分の想像の中でイメージしていることが多いです。だから、録音が終わったら本当に、いい旅から帰ってきたみたいな気持ちになりますね。『ちむどんどん』は戦後の沖縄を舞台にしたお話ですけど、録音前にスタジオで沖縄の大きな海や自然の綺麗な風景を見せてくれて、とてもインスピレーションがわきました。沖縄の方言の響きをイメージしたそうで、曲中で“ニライカナイ”という響きが出てきますが、これは沖縄でとても大切にされている言葉なので、ドキッとするような感じがしますね。

INTERVIEW
2022/05/31
#エミ・エヴァンス
#ケヴィン・ペンキン#岡部啓一
NO.45
Emi Evans vol.3『言語に宿る精神と感情』

たとえばフランス語を喋っているときや、日本語のとき、英語のとき、それぞれの言語を喋るときに違う自分を少し出せるんです。脳みその違う所が動きだす。不思議な言葉を作るときも、ただ口の中の使い方が違うことによって、そこからインスピレーションが出てくる。強いconsonants(=子音)が多い言葉を使うと強い気持ちになるし、柔らかい音を使う言葉だと落ち着いていく感じがあります。それらの言葉から、いつも何かを感じるんです。だから、すごい切ない曲では、その切なさを表現できる美しい言葉は何だろうと調べたりして。面白いのは、その後にいろいろな人が「これはHebrewの言葉だ」とか、「これはフランス語だ」と書いていて、それは結構当たっています(笑)。

INTERVIEW
2022/05/28
#エミ・エヴァンス
#岡部啓一#横尾太郎
NO.44
Emi Evans vol.2『幻想の世界に命を吹き込む歌』

「いろんな種類の世界観をつくりたいから、いろんな異なる感じの、どこの国にもない言葉を作って歌ってください。」と。それまでとは全く違うと思いました。つくられた言葉で歌うことは全く初めての体験だった。遠い未来、言語がだんだん変わっていった世界。それはこういう風になるかもしれないというイメージ。だから、とにかく今まで聞いてきたいろんな国の言葉、英語、フランス語、ポルトガル語、スペイン語、ドイツ語、ウェールズ語、あとそれにプラス他の言語も入れて、いろんな歌をずっと聴いてその音を捕まえていき、それで歌詞が出来上がりました。

INTERVIEW
2022/05/25
#エミ・エヴァンス
#岡部啓一
NO.43
Emi Evans vol.1『声に自信を持てるまで』

自分じゃないことを出そうとするのが気持ち悪くて、「このままでは、もう続けられない」となりました。だから、独立したんです。自分が作りたい音楽を作る。それが作れないと意味がない。だから、本当に音楽の世界は厳しくて大変と分かったけど、それが良い機会にもなりました。もう怖いことがなくなった。むしろ、一番やりたいことが確認できた。それから大学を辞めて、音楽の仕事を増やしました。教会や、ホテルラウンジで歌う仕事もありました。ジャズの曲や、フランス語のシャンソンの曲、ポルトガル語のボサノヴァの曲など、いろんな種類の曲にも挑戦してみて、ちょっとずつ覚えていって、いろんな所で歌えるようになったんです。

INTERVIEW
2022/05/22
#エミ・エヴァンス
NO.42
新津保建秀 vol.7 『生きること、生(なま)であること』

ウクライナの報道を見て、日本が戦争になったら恐ろしいなと思いました。そういうものに全く引っ掛からないような所に住むのがこれから良いのかなとか、本気で思いましたけどね。そうなったら福生とか横須賀とかあるから、この辺りは心配ですよね。どこがいいのか。長野は好きですけどね。妻の出身が長野だから、家族でよく行くんですよ。ただ、ものすごい好きな所があるかというと、今はそうでもないのかもしれない。今、住んでる土地も、家族の日常生活と、仕事の両立に便利な環境であるということで決めた気もします。

INTERVIEW
2022/05/19
#新津保建秀
#カール・ポランニー
NO.41
新津保建秀 vol.6『風景を撮ること、人を撮ること』

風景を人物のように撮って、人物を風景のように撮るというか。その向こうにあるものを眼差して撮る感じです。写真の仕事を始めようと思った当時、写真のなかに描かれる私性――どれだけ被写体とのあいだに深い関係性を構築して写真の中に暗示できるか、それがリアリティだという傾向が大きかったように思います。それが顕著だったのが、被写体が女性のときで、篠山さんや荒木さんの存在もとても大きかった。ただ、そこで語られていたことが、とても狭い意味のなかで捉えられているのではないかという違和感がありました。自分の中では別の解釈があったので始めたのが、いま言ったような被写体との向き合い方です。

INTERVIEW
2022/05/16
#新津保建秀
#曽根裕#ニコラ・ブリオー#evala#岡瑞起#乙一#ナン・ゴールディン#ラリー・クラーク#荒木経惟#篠山紀信
アーカイブ総攬へ
TOP 掲示板 ABOUT 会員登録 運営会社 マイページ

土景運営事務局

〒113-0033 文京区本郷2丁目35-10 本郷瀬川ビル 1F

info.tsuchikei@kusukichi.jp

© 2022 Kusukichi