日本各地で外構設計や庭のデザイン、まちづくりに関わるランドスケープ・デザイナーの吉田葵さん。前編までのレビューをもとに、彼女が風景を考えるときに大切にしていることを話してもらった。
「丁寧にやっていって、知ってもらうっていうことも必要だと思ってやるようになったんです。」
彼女の発言からは、身近な景色の中にも気づいていないことはたくさんあると思い知らされる。風景とはその成り立ちを知り、語り合うことから始まるのかもしれない。主観と客観を横断するという彼女の考え方に迫る。
崎谷 ランドスケープの人は、タイムスパンを建築よりも長く捉えていたり、アプローチが多様な気がするんですが、吉田さんのプロジェクトにも深みというか奥行きが感じられて、その考え方のルーツっていうのは何なんですか? また、いつ頃から考えるようになったんですか?
吉田 これは、もっと遡るんですけど、中学生ぐらいのときに・・・(笑)。
崎谷 中学生かあ(笑)。
吉田 はい。もしくは、小学生ぐらいのときかな。そのときに、人間は酸素がないと生きていけませんって教わるじゃないですか(笑)。
崎谷 うん、教わる(笑)。植物の光合成的な話とかね。
吉田 そう(笑)。呼吸のためには酸素が必要なんだって。それを子どもながらに思ったときに、ちょうど同じタイミングで森林を伐採したりして地球温暖化が進んでいますっていうのを聞いて、「これらがないと生きてけないのに、なぜに切るの?」って思ったのを、けっこう強烈に覚えていて(笑)。
崎谷 木、切ったら死ぬじゃん!みたいな話ですね(笑)。
吉田 そう(笑)。しかも、それで地球が温暖化で大変だみたいなのが、変だなあってすごい思ってて。それで、横国の頃までは、ずっと環境省に行きたいと思ってたんです。
崎谷 え、環境省? 国の?
吉田 はい。国の。その環境省で、地球環境問題とかに取り組みたいと思って、それで横浜国大に家が近かったっていうのもあって、だからそこで樹林の勉強をしたいなと思ったっていう。
崎谷 身内とか身近な大人で、当時そういう研究とか環境的取り組みとかをされてる方がいたんですか?
吉田 いないです(笑)。
崎谷 いないの? いきなりそこに行くのも面白いですね(笑)。この地球を何とかしなきゃみたいな意識が。
吉田 そこまで大げさな感じではないんですけど、すごい興味が湧いちゃったんですよね(笑)。それで湧いちゃったんですけど、周りに聞く人もいないから、どこに進んだら良いかを学校の先…
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