丹羽隆志さん(TAKASHI NIWA ARCHITECTS代表)は、日本を離れ、ベトナムを拠点として設計活動をおこなっている国際的な建築家である。今回のレビューでは、丹羽さんに自身の設計活動について語ってもらい、そこからベトナムの社会状況や環境、その土地に宿る魅力と問題、それらに相対する自身の考えをお聞きした。そこから見えてくるのは、まさに現在進行形で変貌の局面にあるベトナムという国の風景と、一人の建築家との闘いの履歴である。
30歳から8年間パートナーとしてすごしたVTNでは本当にたくさんのプロジェクトに関わることができて、当初予定していた目標を達成できたと考えました。40代になるにあたって、次の10年間の目標を考えたときに、自分なりにベトナムを掘り下げたいという想いがあって、日本に帰るのではなくて、ベトナムで独立することを決めました。
30代はVTNで、これまで紹介したようにベトナムの持っているポテンシャルである「植物の力」、特に「生きた植物」と「竹」という植物エレメントの反復・組み合わせなどにチャレンジしてきましたが、そのポテンシャルはまだまだ幅広い。40代に自分のオフィスで新しく挑戦していることを紹介します。
Pizza 4P's Phan Ke Binh 設計:Takashi Niwa Architects (c)Hoang Le
Pizza 4P’s Phan Ke Binhは、独立して最初にたずさわったレストランのプロジェクトです。
ハノイの街中にあるということで、こちらに来てからずっと気になっていた鋳物に着目し、そのリサーチからはじめました。これらの鋳物は住宅のフェンスによくピンポイントで使われています。プライベート空間である庭や建物とパブリック空間である道路の間に挿入されたフェンス。その仕切りに飾りとして使われているこの鋳物を、リサーチしてみると多くの植物モチーフのデザインが見つかりました。フランス・コロニアル時代のアール・ヌーヴォーの影響が強く出ているのかもしれません。その鋳物をこのレストランの風景の一部として使いました。再構成して、既存のガラスファサードの内側にスクリーンとして配しています。
3層の引き抜け越しに見る (c)Trieu Chien
これは内側から見た写真ですが、この鋳物のスクリーンと外側の風景をレイヤーのように重ねていくことで、ハノイらしい風景が生まれます。ハ…
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