丹羽隆志さん(TAKASHI NIWA ARCHITECTS代表)は、日本を離れ、ベトナムを拠点として設計活動をおこなっている国際的な建築家である。今回のレビューでは、丹羽さんに自身の設計活動について語ってもらい、そこからベトナムの社会状況や環境、その土地に宿る魅力と問題、それらに相対する自身の考えをお聞きした。そこから見えてくるのは、まさに現在進行形で変貌の局面にあるベトナムという国の風景と、一人の建築家との闘いの履歴である。
2010年からベトナムに来て、設計をしています。4年前に自身のオフィス、Takashi Niwa Architectsをハノイで立ち上げました。大学院修士にいた若いころは、他大学である東京大学の景観研究室に半ば居候として出入りさせてもらっていて、周りの人たちに博士課程の学生かと思われるほどでした。当時、博士課程にいらっしゃった崎谷さんや周りの研究室の方たちとコンペなどに取り組ませてもらっていたのが、大変懐かしい思い出です。
今日は皆さんに、僕がベトナムでとりくんできた仕事を中心に話をしたいと思っていて、タイトルに『デザインは語るか?ベトナムからの挑戦』とつけました。いま自分の中で考えている事柄をシェアできればと思います。
その前に、ちょっとオフィスの様子を見せます。こんな感じの部屋でアーキテクト、いわゆる建築家が10人くらい。それとインターンの子たちが来ていて、3Dプリンターなどを使って模型を作ったりしています。
オフィス風景
いまはベトナム人と日本人のスタッフの他に、フランス人やインド人のインターンなどが来てくれることもあります。なので、オフィスではだいたい英語でコミュニケーションしていて、事務所内のスタンダードの言語としています。
ハノイのチーム
ベトナムに来てから最初の8年間は、ヴォ・チョン・ギア・アーキテクツ(Vo Trong Nghia Architects、現在はVTN Architects:以下VTN)というところでパートナーをしていました。崎谷さんの後輩でもあるヴォ・チョン・ギア氏とVTNハノイオフィスを立ち上げ、代表として多くのプロジェクトの設計にたずさわりました。その後、2018年に独立してからはレストランやホテル、オフィスなどを中心に設計をしていて、一風堂のベトナム1号店なども手がけました。いまは橋(La Sai Gon footbridge)などもやっていて、…
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