伊藤遼太さん(Ito Architecutre Associates)は、本メディア『土景』のディレクターも務める若手建築家である。その活動は、建築設計やwebディレクションの他にも教育研究活動、写真・動画の撮影編集、仮想現実空間の制作など多岐に渡って展開している。
今回のレビューでは、彼がずっと魅了され、考え続けてきたという”空間と時間の関係”について、その思考と実践を通じて語ってもらった。
「建築じゃないかもしれない。今っぽくもないし、主流でもない。未だ答えのないことを、こうして話して良いものか不安もある。」
そう前置きをしてから始まった講演録。
――空間の背後に潜む、時間という哲学的領域へ口火を切る。
さて。話を戻すと、三つのスケール(風景、建築、部屋)で、空間に宿された時間というものの感じ方を抽出してみました。そこには、いくつかのループする関係のようなものがあるんじゃないかと思います。
Q.3 三種の時間と、そのループする関係の問題
一番純粋な時間というのは、時計的な規則すらもたない“純粋持続的時間”で、光が揺れているとか、風が吹いているとか、その場で知覚されてるだけの動きによるもの。そして、それが周期性を持ってくると、その規則から――季節の反復や太陽の動きなどを用立てて――“神話的時間”のようなものが現れてくる。さらに、そこから少しずつ変化・蓄積をするようになると、その周期を跳び越えて過去から未来へ進歩する“歴史的時間”のようなものが感じられるようになる。でも、けっきょくこの“歴史的時間”を認識するためには、僕らは毎日の物質的な変化を見ているのであって、再び“純粋持続的時間”に返ってくる。
このように人間の時間の感覚はループしてるんじゃないか、と思うんですよね。
そして、この3種類の時間を建築の中に取り込めたら、すごく面白いなと思っているわけです。
とはいえ、季節の時間とか、歴史の時間というものは、実はすでにけっこう建築はやっています。歴史建築やリノベーションはそれこそ今はホットなトピックですし、街づくりとか文化財とかも、皆さんよく話されていますよね。歴史をどう取り扱うか、どう取り込むかという話は、文脈上よくやられているんです。そして、それとは別に、四季折々の風景を楽しむことや、太陽の角度から建物のデザインを考えるっていうのも、状況は違えど太古から現在までいろいろなところでやってることだと思います。
けど、あんまり建築でやられていないのが、単純に、ぼーっとする時間とかの議論で、そこは未だに、それほどされてないように思うんです。今回でいえば純粋持続の時間です。木漏れ日や風をどう感…
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